人間は、屋外の寒暖を洋服等で調整し、快適に生活できるようにしています。それと同様に、建物によって寒暖をコントロールすることが可能です。人が快適に生活できる住環境を学んでいきましょう!!

室内環境
室内気候と快適性
人には、体温を一定に保とうとする恒温作用があるのをご存じですか?
実感したことはないとは思いますが、体温を計ると常に一定の体温なのがその例です。
人の熱の流れを理解していきましょう。
体内で生産される熱量を産熱量、人体とその周囲の環境とで熱交換される熱量を放熱量といい、この二つが熱平衡となるように作用するのが、恒温作用になります。
この二つを比較することで、人間が快適かどうかを判断することができます。
産熱量=放熱量→快適状態
産熱量>放熱量→熱く感じる
産熱量<放熱量→寒く感じる
この関係は覚えておきましょう!!
温熱環境要素

温熱環境要素は、環境側の要素として、気温、湿度、気流、放射の4つの要素と、人間側の要素として、着衣と代謝の2つの要素からなる合計6つの要素で構成され、温熱環境6要素といわれています。それぞれの要素を一つずつ確認していきましょう。
(1)気温
20℃前後が快適に過ごせる気温であり、それ以上。それ以下になると活動が鈍り始める。椅坐位の場合、くるぶしと頭の温度差は、3℃以内が望ましい。
(2) 湿度
高温でも低湿の場合は、涼しく感じ、低温でも高温の場合は、寒さが和らぐなど、湿度も人体に大きな影響を及ぼす。
(3) 気流
高温でも風があれば涼しく感じ、低温で風が強いと体温が奪われてより寒く感じる。
(4) 放射
放射の影響を考慮した温度に、グローブ温度と平均放射温度MRTがあります。
①グローブ温度:放射の影響を考慮した温度
気温、放射熱、体感の関係を示すのに用いられる。
②平均放射温度MRT:壁体表面の平均温度
グローブ温度に、空気温度、気流速度から対流の影響を求めることで、簡易的に求めることができる。
OT(作用温度)・・環境側の4要素のうち、湿度を除く、気温、気流、放射の三要素で示される指標

作用温度は、静穏な気流下では、室温と平均放射温度MRTとの単純平均値とされることもある。
(5) 代謝量
人体の作業状態による消費エネルギーを代謝量という。
椅坐安静時の代謝量を基準として1met(58.2W/㎡)としている。
室温が同じ場合、作業の程度に応じて代謝量が増えるにつれて、顕熱、潜熱ともに増加するが、全熱に占める潜熱の割合が増加する。
作業状態が同じ場合、室温が上がるにつれて、潜熱が増加することにより顕熱が減少する。
椅坐安静時:1.0[met]
事務作業:1.2 [met] 代謝量=作業時の代謝量/椅坐安静時の代謝量
重作業:3.0 [met]

(6) 着衣量
着衣の熱抵抗の状態を表したものを着衣量という。
着衣量[clo]
裸体:0[clo]
夏の半袖シャツ :0.6[clo]
標準的な背広:1.0 [clo]
冬服の背広: 1.5[clo]
室内環境基準
1.室内汚染物質
汚染物質の種類は以下の通りです。

2.室内環境基準
建築物は、建築基準法、ビル衛生管理法で室内環境基準が定められている。

換気
必要換気量と換気回数
1.必要換気量
換気に必要な新鮮空気量を必要換気量といい、下記の式で表される。


この関係を換気量Qに着目して解いた式が、ザイデルの式です。
k=Q(PiーP₀)
2.換気回数
必要換気量をその室の容積で割った値
換気回数N〔回/h〕=換気量Q〔㎥/h〕/室の容積V〔㎥〕
換気回数Nが等しくても、室の容積Vが異なれば、換気量Qは異なる。
燃焼器具による空気汚染
ここでは、3つのタイプを理解していこう。

①開放型燃焼器具
燃焼に必要な空気を室内から取り入れて、排気ガスも室内へ排出するタイプ
例)コンロ、石油ストーブ
②半密閉型燃焼器具
燃焼に必要な空気を室内から取り入れて、排気ガスは煙突で屋外へ排出するタイプ
例)煙突付きストーブ

③密閉型燃焼器具
燃焼に必要な空気を屋外から取り入れて、排気ガスも屋外へ強制的にファンなどで排出するタイプ
例)FF式のファンヒーター
最も安全な燃焼器具とされているが、暖房効率が悪いのが欠点。
換気方式

- 風力換気
風力換気は圧力差による換気方式
その式は右記のように表される。
- 温度差換気
温度差による空気密度の違いで換気する方式
その式は下記のように表される。

- 機械換気
機械換気には、3種類に分類されます。

第一種換気 給気:機械 排気:機械 →最も完全な方式 例)高気密住宅、屋内駐車場
第二種換気 給気:機械 排気:自然 →外部からの汚染物質の流入を防ぐ方式 例)ボイラー室
第三種換気 給気:自然 排気:機械 →室内で発生する臭いの流出を防ぐ方式 例)トイレ、厨房
まとめ(確認問題)
ここまで、室内気候と換気に関して勉強してきました。いかがだったでしょうか。
温熱環境評価に関しては、OT(作用温度)、グローブ温度のほかに7つの指標が存在します。それらに関しては、別で紹介していきますので、今回の内容を理解してから取り組んでいきましょう!!
では、確認問題を解いて今回は終わりましょう!お疲れさまでした_(._.)_
確認問題
1.温熱環境6要素とは、気温・温度・気流・放射・代謝量・着衣量のことである。
2.グローブ温度は、周囲からの放射の影響を考慮した温度である。
3.静穏な気流条件の暖房室においては、作用温度は、一般に、気温と平均放射温度との平均値で表される。
4椅坐安静状態における成人の単位体表面積当たりの代謝量は、約100W/㎡である。
5.一般の室内における二酸化炭素(CO₂)濃度の許容濃度は、1000ppm(0.1%)である。
6.在室者が7人いる室において、イ~二の条件におけるCO₂濃度からみた必要換気回数に最も近いものは、次のうちどれか。
条件
イ.室の容積:25㎡
ロ.1人当たりの呼吸によるCO₂排出量:0.02㎥/h
ハ.大気中のCO₂濃度:300ppm
二.室内空気中のCO₂許容濃度:1000ppm
7.半密閉型燃焼機器では、燃焼に必要な空気を室内から取り入れる。
8.同一風向の場合、風力による換気量は、風速の2乗に比例する。
9.室の上下に開口部を設けた場合、換気量は、上下の開口部の中心部相互の垂直距離の平方根に反比例する。
10.住宅の便所や浴室等は、排気ファンによる換気が適している。
答え
1.〇 2.〇 3.〇 4.× 椅坐安静時は、約58W/㎡ 5.〇 6.条件よりQ=200〔㎥/h〕N=200/25=8〔回/h〕7.〇 8.× 風速に比例 9.× 平方根に比例 10.〇
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